狼を甘くするためのレシピ〜*
 そこに知り合いの氷室仁がいれば、お忍びではなくなってしまう。

「と、とりあえず外へ出ましょうか」

 紗空にそう言われて我に返った蘭々は、ハッとしたように踵を返す。

「そ、そうね。いま仁に会うわけにはいかないわ」

 店から少し離れ、建物の陰に移動すると、ふたりはホッと胸を撫でおろした。

「あー、びっくりした」

「まさかの氷室さんでしたね! ちなみに、氷室さんが一緒にいたのは私が知らない男の人でした。同じ歳くらいの」

「え? どんな感じの人?」

「座っていたので身長はわかりません。顔も横顔だったし……。スーツを着ていたってことくらいしか。すみません」

「いいのよ。そうよね、スーツの男の人なんてみんな似たり寄ったりだもの」

「多分イケメンです。そんな雰囲気はありました」

 ピピピ、ピピピ、ピピピ
「きゃ」

 突然、紗空のスマートホンが鳴り、ふたりは飛び上がらんばかりに驚いた。
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