狼を甘くするためのレシピ〜*

『ああ、蘭々、赤坂にいるんだけど、これから飲みに来ないか?』

「あー、残念、ちょっと用事があるの」

『なんだそうか、じゃあもし早く用事が済みそうなら連絡くれよ。どうせ遅くまで飲んでるし』

「了解」

『じゃあ、またな』

「うん。またね」

 スマートホンをバッグにしまうと、ハァーと、ため息をつく。

 深いため息の理由は、仁の忠告を無視してこれから男と会うという、後ろめたさがひとつ。

 そして、言い訳を考えながらケイへのネクタイを選び、未練がましくスマートホンを見るためにバッグを覗いた自分に対するため息だ。

 それでも、このままケイとの約束をすっぽかして家に帰るという選択肢はなかった。

 ――せっかく買ったんだもの。渡さなきゃ。

 物陰に隠れてウィッグを取り、手櫛で髪を整える。
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