狼を甘くするためのレシピ〜*
「ふぅーん」

 どういう仕事なのかすごく気になるが、また『そういうことは聞かない約束じゃないのか?』と言われるに違いない。
 聞きたい気持ちをぐっと抑えた。

「こういう夜景より、田園風景の方が好きか?」

「どっちも好きよ。それぞれ、いいところがあるもの」

 返事の代わりにケイは、肩をすくめる。

 ふと気づいた。
 感動するには感動するが、蘭々には見慣れた夜景だ。

 でもどうだろう。
 今の自分は蘭々ではなくアキだ。
 田舎暮らしのアキは見慣れてはいないはず。

 それでわざわざこの店に連れてきてくれたのかもしれない。

 ――もっと感動すればよかった……。
 そう後悔した。

 何か適当なことを言って誤魔化そうと思ったが、かといって嘘はつきたくない。

 だから。

「この夜景も、この席もありがとう。特別な感じがするわ」

 そう言って、精一杯、微笑んだ。
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