狼を甘くするためのレシピ〜*
「ああ、仕事の度にホテル暮らしも何かと面倒だからな。マンション買ったんだ」

 ――実家もどうせこっちにあるんでしょ。
 そう思いながらも、興味が先に立った。

 一体どんな部屋に住んでいるのだろう?

「どうする? マンションはここからタクシーですぐだ。それとも行きたい店とかあるか?」

「部屋が見たい」思わずそう答えた。

「オッケー。酒はワインにビールなんでもあるが、つまみはチーズと乾物と冷凍野菜くらいしかないな」

「十分よ。お腹もいっぱいだし」

 うっかりとそう言ってしまったが、手ぶらでお邪魔するのは如何なものか。
 かと言って、お酒は何でもあるというのにと考えているうちに、ケイは手を上げてタクシーを止めてしまった。
 走り出したタクシーの中で、仕方がない。買ったネクタイに、そのお礼も込めさせてもらおう。

 そんなことを考えるうち、タクシーが止まった。
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