狼を甘くするためのレシピ〜*
 クスッと笑いながらエンジンをかけると――。

「え?」

 車はうんともすんとも言わない。

 もともと車に詳しくはない。
 自分で運転するのはこの土地に来た時のみで、運転したことがあるのも叔母の車だけだった。

 少し古い車なので、鍵を直接鍵穴に入れて回せば、車は音を立てるはずだった。
 カチカチと鍵をひねって何度か試してみたものの、全く何の反応もない。

「あー、もう、どうしよう」
 ぼやきながら、ドアを開けて外に出た時だった。

「もしかしてバッテリーあがっちゃった?」

 隣から声がした。

 振り返ると、軽トラックに荷物を載せている若い男がこっちを向いている。
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