狼を甘くするためのレシピ〜*

 一体いつからその席にいたのか。
 話に集中していたので、全く気付かなかった。

 席は離れている。

 彼らとの間に客席は三つ。
 観葉植物や仕切りもあるし、声は全く届かない。

 我に返ったように体の向きを変えて、彼らのほうに背を向けながら蘭々は小声で言った。

「気づかれていないわ。髪を長くして会ったことはないの。ショートヘアの私しか知らない。だから、大丈夫」

 冷えた声だった。

 ミナモトケイはひとりじゃなかった。

 女性と一緒である。

 そして紗空が見た時は、ちょうどその女性に贈り物を渡しているところだった。

 もう一度チラリと見る。

 相手の女性が、その贈り物を開けている。

 手に取った物はネックレス。

 彼女はうれしそうに笑っていた。
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