狼を甘くするためのレシピ〜*
 径生が自動ドアの向こうに消えてから間もなく、森が慌ててマシーンでコーヒーを落としている月子の元に来た。

『社長が仁さんに殴られてます!』

『なんですって?』

 慌てて廊下に出ると、廊下で倒れ、上半身を起こして切れた口元の血を拭っている径生と、見下ろす氷室仁のふたりがいた。

『ど、どうしたんですかっ』

 氷室仁は鬼の形相で径生を睨んでいる。

『だ、大丈夫ですか、社長』

『ああ、大丈夫だ』

『森くん、タオルを濡らして持ってきて』

『はい』

『氷室さん、とりあえず中へ入ってください』

 たまたま森は外出先から帰ってきて通りかかっただけで、幸いなことに他に人はいなかった。
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