狼を甘くするためのレシピ〜*
 さすがに女性がいる目の前でこれ以上のことはしないだろう。
 そう思いながら月子はその場を離れず、せき立てるようにしてふたりに会議室に入ってもらった。

 そしてミーティングルームに入ると、氷室仁が言ったのである。

『彼女か?』

 氷室仁は、その様子から月子のことを言っているらしかった。

 もちろん月子には全く意味は分からないが。
『え? 私、ですか?』と聞き返した。

『ちょっと待て、仁、順を追って説明してくれないか。どうして俺は殴られるんだ?』

 イテェと言いながら親指で唇についた血を確認しつつ、径生が言う。

『月子、もういいぞ』と言われたが、『彼女か?』と謎の目を向けられたのだから、月子としても席は立てなかった。

『あの、なにか、私が関係しているのでしょうか?』

 すると、氷室仁は目をつむって気持ちを落ち着かせるように大きく息を吐き、再び瞼をあげるとゆっくりと言った。

『三日前の昼、径生からネックレスを貰った?』
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