狼を甘くするためのレシピ〜*
 以前、彼女はクラスメイトを助けるために、ひとりで高慢な誰よりも力のある令嬢に立ち向かったという話は、伝説にもなっている。
 彼女は入学当初から、いつもひとりでいたらしいが、いつしか、西園寺洸や氷室仁や伝説の生徒会長鈴木翼というナイトたちが彼女を守るように現れるようになったということのも、知らない人はいない話だった。

 そんな彼女が、あんな形で男に裏切られることなど、紗空にはどうしても信じられないことなのである。

『――許せないわ。ミナモトケイ』

 悔しいし悲しい。

『紗空ちゃん私ね、恥ずかしいんだけど、結局意気地なしなのよ。あの人に確認するつもりだったのに、ちゃんと聞けなかった。恋人ってわけじゃないのよ。気持ちを確認したわけじゃないし。だから、むしろ今のうちにわかってよかったわ』

 あの日、彼女はそう言って笑った。

 “ちゃんと聞けなかった”

 蘭々の口がそう言った時、涙が溢れそうになった。

 聞きたいのに聞けない。

 紗空にはその気持ちが痛いほどわかった。
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