狼を甘くするためのレシピ〜*
 そんな深刻な紗空の事情を知る由もない。

 月子はただただ驚いていた。

『ミナモトケイさんとお付き合いしていらっしゃるんですか?』

 ――え?

 目も前に立つ彼女の唇は微かに震え、その目は真剣で、心なしか潤んでいるようにも見える。

 今日起きた事件と、この謎の声掛け事件は、全く関係ないとは思えない。

 ――なるほど、そういうことね。

 軽くため息をついた月子は、バッグからハンカチを取り出して手を拭いた。

 思いつめたようにこんなことを言ってくる相手は、ひとりしかいない。

 冗談じゃないと思った。

 なんと愚かな女なのだろう。

 確かめもせず勝手に疑い、そのせいで社長源径生は社員の前に殴られるという屈辱を受けたのである。

 笑い話にはしているが、実は、月子のはらわたは煮えくり返っていた。

 ふ・ざ・け・る・な、本当はそう言いたい
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