狼を甘くするためのレシピ〜*
 洸の恋人のためのアクセサリーを選ぶ。

 少し前の自分だったら、この作業がどれほど辛いことだっただろう。

 どうやって笑顔を作っていいのかも忘れるほど心に傷を負いながら、ネックレスを手に取ったに違いない。

 でも、いまは違う。
 我ながらげんきんだ。

 黒髪の素直そうな可愛い彼女を思い浮かべても、あの夜見かけた時とは違う。

 洸の恋人を思い浮かべながら選ぶことは、いまは不思議なほど楽しかった。


 その日は洸が最後の客だった。

 彼らと一緒に店を出ようとして一旦着替えるために奥に行くと、
「あ、蘭々さん、ごめんなさい!伝え忘れていました」
 慌てたように同僚の女性が入ってきた。

「ん? なに?」

「昨日お客様に言付かっていたんです」

 彼女がそう言って手にしたメモを見る。

「ケイが来たと伝えてくれと。それだけおっしゃっていました」
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