狼を甘くするためのレシピ〜*
「なるほど!」
 パンと両手を叩き、思わず強く返事をする蘭々がおもしろかったのか、男はにっこりと白い歯を見せて笑う。

 笑いながらも彼は手を休めない。
 バッテリーにケーブルを繋ぎ、軽トラックに乗りエンジンをかけると、窓から身を乗り出した。

「エンジン掛けてみろ」

「あ、は、はい」

 急いで車に乗り鍵を回すと、車はブゥーンと生き返ったように音を立てた。

「動いたっ。動きました!」

「よかったな。これで大丈夫だ」

「ありがとうございます。ほんとうに」

 外したケーブルを元の場所に戻す彼の後ろ姿を見つめながら、蘭々は目まぐるしく頭を悩ませた。

 ――こんな時は、どう礼を言ったらいいのだろう?

 住所を聞いて、あらためて礼に伺うべき?
 せめて名前だけでも聞くべきなのだろうか?
 それとも今、お金を払うべき? ああ、一体どうしたらいいの?

 でも、蘭々のそんな心配をよそに、手早く後始末を終えた彼はにっこりと笑う。

「礼には及ばずだ。じゃあな」
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