狼を甘くするためのレシピ〜*
 彼は軽トラックに乗ると、挨拶のように日焼けした片手を上げて前を向いた。

 ゴトゴトと荷台の音を立てながら走しりだす軽トラックに向けて、蘭々は慌てて「ありがとうございました」と声を張り上げ、深々と頭を下げた。
顔をあげた時には既に、軽トラックは出口にいて通りに出ようとしている。


 嵐のようなひと時だった。

 はぁーとひと息つき、ウインカーを点滅させて通りに出るトラックを見つめながら思った。

 ――自分と同じくらいの歳だろうか。

 背は高い。百八十センチは超えている。

 スラリとしているが、しっかりと筋肉はついていた。少しくたびれたロングTシャツがやけに似合って見えたのは、力強い肩と胸板のせいか。

 日焼けした腕や手に浮き出た血管が、妙に男を感じさせ、印象に残る。
 そして何より、小麦色の肌に綺麗に並んだ白い歯がよく映える、素敵な笑顔の持ち主だった。

 ――うちの事務所の社長なら、速攻でスカウトしたかもしれないな。

 まぁあの感じだと、芸能界には全く興味はなさそうだけど。
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