狼を甘くするためのレシピ〜*
 そんなことを思いながら、さて車に乗ろうとドアに手をかけると、「いい男だねぇー」と後ろから声がした。

 振り返ると見知らぬ老婆がいる。

 曲がっている背中を伸ばして、もう見えなくなった軽トラックの方を見て笑った。

「あたしがあと五十歳若かったら、あの荷台に飛び乗ったよ」

「あはは」と蘭々もつられて笑いながら、ふと思う。

――このお婆ちゃんのほうが、ずっと乙女じゃないか。

 冷静に分析している自分に、だめじゃん私と突っ込みを入れ苦笑した。



   ※※※



 のんびり過ごす一日は、長いようで短い。

 公園のベンチに座っていた蘭々は、手にした本を閉じた。

 小さく「あー」と声を出しながら大きく手を伸ばす。

 叔母から借りて読んだ文庫本も十冊を超えた。いま、最後の一行を読み終えて十一冊になる。


  ――平和だ。
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