狼を甘くするためのレシピ〜*
 スマートホンを閉じると、景色が変わった気がした。

 今のたわいもないメッセージのやりとりが、惰眠をむさぼっている頭の中をノックしたのかもしれない。いい加減現実に帰ろうと言っているのだろう。

 都内の自宅に戻って一週間後には、新しい職場となる宝石店に通うことになる。

 見知らぬ街でなんの予定もなく過ごす日々にも、のんびりとした田舎の空気とも、遂に明日でお別れ。

 長い休みは終わりだ

 まだ少し、名残惜しい気がした。
 あともう一週間くらい、この地に溶け込んで生活してみたかった。

 蘭々ではなく、アキという別人のまま、一週間と言わず年単位でもいい、コンビニの店員などしてみたら、それはそれで楽しいかったかも? と思ったりもする。

 もしかしたら、軽トラックのお兄さんに助けてもらったように心が温まる出会いがあるかもしれない。

 もしかしたら、いいことと同じくらい嫌なことがあるかもしれないが、そんなことも含めて全てがいい思い出になるだろう。
< 32 / 277 >

この作品をシェア

pagetop