狼を甘くするためのレシピ〜*
 バッテリーがあがってしまった後、叔母と話しをした時のことだ。

『あら、いい経験になったわね』
 呑気な叔母はそう言って笑った。
『まずはそういう些細な苦労をしないと、蘭々は世間知らずなんだから』

 確かにそうだった。
 ひとつのことをやり遂げたのはいいけれど、狭い世界しか知らないために感覚がずれているのかもしれないと思う。
マネージャーに仁やコウといった頼りになる友人達。思えば、自分の周りにはいつも、自分を手助けしてくれる人がいた。

 自分が気づかないだけで、痒い所に手が届く気配り上手な人たちの愛情に、どれほど守られてきたか……。

 普通の女子になって普通の日々を送るためにはまず、世間を見なくては。

 それはここでなくても、青山の店にいっても出来るはず。
 そんなことを思いながらスマートホンをバッグにしまった時、手の甲にポツリと雨の粒が落ちた。

「――あ」

 気がつけば見上げた空は真っ暗で、公園にいたはずの小さな子供やママ達はいつの間にかいなくなっている。
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