狼を甘くするためのレシピ〜*
 果たして男は「まじ? たださ、今晩は約束があるんだ」と言う。

 ――やっぱりね。

 答えはその1だったかと、と内心ほくそ笑み、それならせめてここのコーヒー代と言おうとした。

 ところが男は、スマートホンを見ながら「明日の夜でどうよ」と言う。

「え?」

 それは久しぶりに胸が躍る瞬間だった。

「明日なら空いてるんだ」

 ――そうなの?

 蘭々は明日の昼間に、都内の自宅へ帰る予定でいた。
 ただ明後日の予定が決まっているわけではないし、明日の出発が夜になったところで何の問題もない。

「じゃあ明日の夜、飲みましょう」
 考えるまでもなく自然とそう答えていた。

「おう」

 うれしそうに男が笑う。

 それがなんだかうれしくて、

 ――ふふ、楽しみ。
  暗い女のはずの蘭々は、またしてもついその設定を忘れてニッコリと微笑んだ。
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