大嫌いの裏側で恋をする

『私』は、間宮香織のような美女ではない。
けれど、可愛く見せようと努力することはできる。

『私』は吉川さんのように場を和ませながら仕事を回せる器用さはない。
けれど、そうなろうと努力することはできる。

そして何より『私』は、出来が悪い。
昔から頭が悪い、素直じゃない。
だけど、どうやって生きてきた?

先ばかりを、見過ぎないことだ。
まず目先の課題をこなしながら、バカなりに必死に生きてきたじゃないか。

そうして走り抜いてきたから、高瀬さんは私を認めてくれるようになったんじゃないの?

今の、目の前の。
私が越えるべきものは?

――高瀬さんの前で、素直になること。

(そうだよ、なんでこんな単純なことが見えなくなってたの)

深呼吸して、唐揚げ丼の最後に残してた唐揚げをひとつ、口にする。

吉川さんに追いつきたい?
高瀬さんの隣に立っても恥ずかしくない人間になりたい?

完全にキャパオーバーだった。

ふと、思い出したのは異動してきた頃ムカつくばかりだった高瀬さんが言った。

『できないじゃねーよ、やるんだよ』

そんなセリフだった。
今の私にこそ、染み渡る。

はい、わかりました、高瀬さん。
やります、やってみせます。
勇気を出して素直になります!

だって、自分の成長と恋愛過程が必ずしも比例してなければならないと誰が決めたの?
誰も決めてなんてないじゃないか。
< 102 / 332 >

この作品をシェア

pagetop