大嫌いの裏側で恋をする

「早く来い。あと奥田。 お前も早く出ろよ、予定詰まってんだろ」
「ああ、ほんとだね。 じゃ行くけど、高瀬」
「なんだよ」
「いや、程々にね~」

ひらひらと、手を振って歩き出した奥田さんを目で追ってると頭上から舌打ち。

いや、だからこの人なんでこんな機嫌悪いの?

「……課長、そんなに怒ってるんです?」
「は? 知らねーよ、俺も今から聞く」
「じゃあ何で、そんな機嫌悪いんです?」

私を見下ろす瞳が、ちょっとだけ見開かれる。

「……別に普通だろ」
「まあ、うん。 そうですね、高瀬さんだもんね」
「あ?」
「いえいえ、奥田さんがいたから高瀬さんの態度の悪さが強調されてたのかもなぁって」

なんて、憎まれ口を叩いてみると。
掴まれてた手首が離されて、涼しいエアコンの風が当たる。
ちょっと、残念。

代わりに、その手が私の頭に触れる。
わしゃわしゃと手荒に、朝の時間ない時に頑張ってきたブローを台無しにする。

「言ってろ、バカ」

ニッと、片方の口角だけを僅かに上げて多分ちょっと、笑った。

その、よく見てないとわからない小さな笑顔が。

ブローの努力を台無しにされたって、嬉しいみたいで。
心臓がドキドキ、うるさい。
課長に怒られに行くっていうのに……
いやいや。
恋のチカラってこんなに凄かったっけ?
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