大嫌いの裏側で恋をする

「おう、石川。 秋田くんとこが取ってくる注文は、うちの数字の半分は占めてるからな」
「はい?」
「その秋田くんの担当は高瀬」
「は、はい」

異動前の面談で話した内容を、課長にそのまま繰り返される。

秋田さんの会社と、うちの会社は。
辿れば同じ親会社を持つグループ企業。
それでいて、うちの会社の代理店。
別会社ではあるけれど、請求書の流れなんかも割と適当で私は楽だな。
なんて、当初思ってたりもしたんだけど。

「秋田くん、アレで結構手懐けるのが厄介な相手だからなあ」
「…………はい」
「気を抜いていい相手じゃないのだけは、覚えとけ」
「はい、すみませんでした」
「あと、請求も。お前この間やらかしてたなあ?」

う。 と、小さく呻く。
請求ミスは課長にも先方に足を運んでもらい、迷惑をかけた。

「……本当に、すみませんでした」

わかりやすく、多分肩を落とした私の背後で声がする。

「アンタが直接小言なんて珍しいっすね、事務に」
「なんだ、お前。結局戻ってくるなら最後まで聞いとらんか」
「秋田さんに連絡取って、後ろ見たら話続いてたみたいなんで。 戻ったんすよ、わざわざね」

棘のある高瀬さんの言葉を受けて。
がはは、と課長が楽しそうな笑い声をあげた。
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