大嫌いの裏側で恋をする


課長の席を離れて、自分のデスクを目指してると。
高瀬さんが唐突にその名を出した。

「吉川でも連れてくか?」
「え?」
「いや、秋田さんとこの事務来ないらしいから」

スマホ片手に、秋田さんとのメールのやり取りを見せてくるから。

ああ、なるほど。
なんて適当に返しながら頷く。

「そ、そうですね。 その方が高瀬さんもいいですよね」
「俺は別にどっちでもいいけど、聞いてみるか」

言うが早いか。
高瀬さんは吉川さんのデスクに向かった。
その背中を、見つめてる私の虚しさよ。

はあ……、って大袈裟に溜息ついて気持ちを切り替える。
スリープ状態のパソコンのマウスを動かして、また溜息。

(歯磨きでもしてサッパリするか)

吉川さんの名が、高瀬さんの口から放たれるだけで。
こんなに気分が左右されてちゃダメなのに。

昼休みは、とっくに終わってるから。
まわりに何となく見られないようにひっそりと、カバンから歯ブラシセットを取り出して。

トボトボ歩いて、トイレに向かったのだった。

恋をすると。
こんなにも気分が上がったり下がったり、
忙しいものだっけ?
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