大嫌いの裏側で恋をする


「ん〜、どうかなぁ。 ちょっとは、わかるかなぁ」

と、頰に指をあて小首を傾げる。
さらり、と長い髪が流れて甘くていいにおいが漂った。
……ように思えて私は何となく高瀬さんをみる。

「だったら、次からは俺に聞くな」
「ええ、そんなぁ」

美人にも社内でだと安定して塩なんですね。
ちょっと安心です。

「ほら、早く仕事貰って席戻れ」

短く言って間宮香織に背を向けパソコンを触り始める。

「仕事〜くださぁい」

と、言いながら。
目が合った私を、わかりやすく睨みつける。
その顔、高瀬さんの前と全然違うね、清々しい。
……切り替えが見事だわ、間宮香織。

「あ、うん。 じゃあ、これ今印刷して来た発注書だからチェックを」
「はいはぁい、石川さんの〜間違い探しですねぇ、はぁい」

可愛い声で答えた直後。
ちょうど社用の携帯の着信に応えた高瀬さんを、横目で確認した間宮香織が。
私の横を離れる直前、ボソッと言う。
「調子乗んなよ、ババア」って。
ババア? いや待って2個しか変わんないし、てゆうか、声低くない?
地声それなの? 普段どっから声出してんの!?

やはり。
切り替えが見事だわ、間宮香織!

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