大嫌いの裏側で恋をする
悶々しながら、次の注文書を確認してると高瀬さんの声が聞こえてきた。
「俺、今日から日中また外出多くなるから」
「あ、そうなんですね、わかりました」
注文書に目を通しながら、ちらっと横を見て答える。
「ん、じゃあ、行くけど。 間宮への指示含めて頼むな」
「はい、わかりました! いってらっしゃ……」
『いってらっしゃい』の声が途切れる。
だって。
高瀬さんが、耳元で。
囁くように、言うから。
「あと、禁煙の方の休憩スペース、来い。 定時頃戻るから、それくらいに」
「……え?」
「無理すんなよ、なんかあったら電話しろ、いいな」
高瀬さんの声がするたび、耳に吐息がかかる。
女は、こういうのいちいちドキドキするんですけど、高瀬さんはわかってやってますか?
わかってないんですか?
わかってないなら天然タラシですね。
なんて、恥ずかしさを紛らわすために思ってみるけど、紛れない。
ドキドキしてる。
「わ、わかりました」
私が頷くと、ぽんっと肩に手が少し触れて。
そのまま荷物を持って課長席の後ろにあるホワイトボードに『外出〜17時帰社』と記入して。
「外出〜?」と駆け寄ってきた間宮香織をあしらって出て行った。
それを、眺めながら。
ここで話しにくい内容だと、間宮香織のことなんだろうなぁ。
って、ぼんやり思ってた。