月がキレイな夜に、きみの一番星になりたい。
「すげえな。俺は文字を読むのが嫌いだから、
本を開いたらすぐにあくびが出る」
「ふふっ、なら私が読んだ本の話をするよ。
それなら、聞いてるだけでいいでしょう?」
「それ、すげえ名案」
「じゃあ、きっと誰でも知ってる
『ロミオとジュリエット』 から……」
私たちはバルコニーに戻り、柵に背を預けて座る。
夜斗くんとモイラに、
シェイクスピアの戯曲のストーリーを語りきかせた。
舞台は14世紀のイタリアの都市、ヴェローナ。
血で血を洗う抗争に巻きこまれている皇帝派の
モンタギュー家のロミオと、教皇派の
キャピュレット家のジュリエットは恋に落ちる。
修道僧のもとで密かに結婚をするけれど、
ロミオはキャピュレット家の甥に親友を殺され、
仇を討ってしまう。
そこから、両家の争いは激化した。
そしてジュリエットはロミオと引きはなされ、
別の男性と結婚させられそうになる。
修道僧はそんなジュリエットに、
24時間仮死状態になる薬を飲み、
死んだことにすること。
目覚めたらロミオと駆けおちするという策を授ける。
しかし、その策はロミオには伝わらず……。
愛する人が死んでしまったと思ったロミオは、
ジュリエットのあとを追って毒薬を飲んだ。
目覚めたジュリエットも事のなりゆきを知って、
ロミオの短剣で自害。
「モンタギュー家とキャピュレット家は
ふたりの死を悲しみ、その死によって
両家の争いは終わりました。
これが、ロミオとジュリエットの物語だよ」
話しおえて、夜斗くんを見る。
すると、なぜだか腕を組んで難しい顔をしていた。
「くどいな」
「……へ?」
唐突なうえに、ぞんざいな感想が返ってきて、
私は間抜けな声をだしてしまう。
そんな私に気づいているのか、いないのか。
夜斗くんは淡々と感想を語りだす。
「好きなやつと添いとげるために死んだフリをするとか、
そもそも家が敵対してるからって、
いちいち修道僧に相談しにいくのもくどい」
「…………」
火がついたように弁論を始める夜斗くんに、
私はぽかんとしてしまう。
そんな私を置いてきぼりにして、
夜斗くんは話しつづける。
「ふたりが本気でそばにいたいと思うんなら、
家なんてさっさと捨てて、駆けおちでもなんでも
すればいいだろ」
きっと夜斗くんは、好きな人のためなら家も人も
なにもかも捨てられる、情熱的な恋をする人なんだろうな。
それは、女の子からしたらうれしいけど……。