mimic
× − × − ×


目が覚めたら、居間のソファの上だった。


「痛……」


肘をついて体を起こそうとしたら、こめかみから後頭部にかけてズキンと鋭い痛みが走る。


「二日酔い……」


月が見えていたはずの空にはすでに太陽が昇っていて、開け放していた窓はきちんと閉められていた。


「た、多野木……?」


文字通り頭を抱えてなんとか上半身を起こすと、部屋のなかには微かにアルコールの匂いが残っていたものの、昨日来た男の姿はない。

狐につままれた、のか?


「まさか、ね」


中指でゆっくりと、乾いた唇をなぞる。僅かに感触が残っているような気がして、わたしは首を左右に振った。


「痛っ!」


いくら酔ってたからって、よく知りもしないタヌキだかキツネ(しかも間接的にだけど唯ちゃんの仕事関係者)とキスするなんて!


やばい、わたし……信じられない!


「……小夏?」


聞き慣れた声がして、居間のドアが開く。

なるべく頭を動かさないように目を向けると、「なんだ、居たのか」ほっとしたような表情を見せた相手は、こちらに歩み寄った。


「ゆ、ゆゆゆ唯ちゃん!」
「おはよ、つーかもう昼だけど」


スーツのジャケットを脱ぎ、わたしの隣に腰を下ろす。
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