mimic
動けない魔法でもかけられたかのように、わたしはその手の行方を目の隅でとらえた。
「髪、食べてるよ」
口元に伸びてきた指先は、海風になびくわたしの髪の毛をそっとすくう。
小指が微かに、耳のすぐ下に触れた。
「っ!」
「ごめん、びっくりしちゃった? むやみに触れないね。女の子の、こういうとこ」
くすりと片頬で笑い、もう一度、今度は確実に故意でうなじをすっとなぞる。
「……なっ!」
「じゃね。俺、帰るわ」
振り払おうとした寸でのところで手を引っ込めると、多野木は回れ右をして歩き出した。
「な、なんなのよ……っ」
またキス、されるかと思った。
しかもそんなわたしに気づいてる、って感じだった。それが無性に腹が立つ。
さっき触れられた部分を手で擦ると、小さくなった多野木の後ろ姿が暗闇に紛れて見えなくなるまで睨み続けた。
「髪、食べてるよ」
口元に伸びてきた指先は、海風になびくわたしの髪の毛をそっとすくう。
小指が微かに、耳のすぐ下に触れた。
「っ!」
「ごめん、びっくりしちゃった? むやみに触れないね。女の子の、こういうとこ」
くすりと片頬で笑い、もう一度、今度は確実に故意でうなじをすっとなぞる。
「……なっ!」
「じゃね。俺、帰るわ」
振り払おうとした寸でのところで手を引っ込めると、多野木は回れ右をして歩き出した。
「な、なんなのよ……っ」
またキス、されるかと思った。
しかもそんなわたしに気づいてる、って感じだった。それが無性に腹が立つ。
さっき触れられた部分を手で擦ると、小さくなった多野木の後ろ姿が暗闇に紛れて見えなくなるまで睨み続けた。