mimic
今夜のメニューはパスタ。帰って来て一番にワイシャツを脱いだ海月は、白いティーシャツと生成りのハーフパンツに着替えて台所に立った。
調理している間、わたしは小屋のなかから古い金魚鉢を探し出し、庭の水道で洗った。
千葉さんに教えてもらった通りに計量して水に中和剤を混ぜ、和金を流す。
金魚鉢は、昔唯ちゃんが夏祭りでとってきた金魚を飼っていたときに使ったもの。ポンプをセットすると、すこし狭そうだった。
わたしが金魚鉢を持って登場すると、夕飯の準備が整った食卓で海月はちらりとこちらを一瞥しただけで、あとはやっぱり笑った。
大分食事が進んで、お互いの皿が空になりかけた頃。
「〝さっきは〟って?」
と、海月が言った。
「さぁ」などとうそぶくわたしに、海月はそれ以上追及しようとはしなかった。
わたしが洗い物をしていると、海月は冷蔵庫からビールを出して小脇に抱え、コンセントをわざわざ差し替えて金魚鉢を窓辺に持ってった。
大事そうに自分の隣に和金を置いて、ビール片手に庭を眺める。
洗い物が終わり、わたしはエプロンで手を拭きながら海月のそばに腰を下ろした。和金は狭い金魚鉢のなかをぐるぐる回っている。
「ねぇ、この子に名前つけようよ」
「コナツ」
「え! わたしと一緒⁉︎」
「苗字で名乗ったのに、名前で呼んだね。さっきの男」
一瞬、なんのことがわからなくて、わたしは頭を働かせた。
「あ。」
阿部店長に〝小夏さん〟と呼ばれたような気もする……。
「あの人、ホームセンターの新しい店長なんだって。今日会ったの」
「どうして小夏に謝るの」
「下着姿を見られたから」
「ははは」
いや、笑うとこじゃないし。
調理している間、わたしは小屋のなかから古い金魚鉢を探し出し、庭の水道で洗った。
千葉さんに教えてもらった通りに計量して水に中和剤を混ぜ、和金を流す。
金魚鉢は、昔唯ちゃんが夏祭りでとってきた金魚を飼っていたときに使ったもの。ポンプをセットすると、すこし狭そうだった。
わたしが金魚鉢を持って登場すると、夕飯の準備が整った食卓で海月はちらりとこちらを一瞥しただけで、あとはやっぱり笑った。
大分食事が進んで、お互いの皿が空になりかけた頃。
「〝さっきは〟って?」
と、海月が言った。
「さぁ」などとうそぶくわたしに、海月はそれ以上追及しようとはしなかった。
わたしが洗い物をしていると、海月は冷蔵庫からビールを出して小脇に抱え、コンセントをわざわざ差し替えて金魚鉢を窓辺に持ってった。
大事そうに自分の隣に和金を置いて、ビール片手に庭を眺める。
洗い物が終わり、わたしはエプロンで手を拭きながら海月のそばに腰を下ろした。和金は狭い金魚鉢のなかをぐるぐる回っている。
「ねぇ、この子に名前つけようよ」
「コナツ」
「え! わたしと一緒⁉︎」
「苗字で名乗ったのに、名前で呼んだね。さっきの男」
一瞬、なんのことがわからなくて、わたしは頭を働かせた。
「あ。」
阿部店長に〝小夏さん〟と呼ばれたような気もする……。
「あの人、ホームセンターの新しい店長なんだって。今日会ったの」
「どうして小夏に謝るの」
「下着姿を見られたから」
「ははは」
いや、笑うとこじゃないし。