mimic
サロンの予約客が来て、千葉さんは接客の為にその場を離れた。
水槽の、エアーポンプの音がやけに大きく聞こえる。
「小夏さんは、動物好きなの?」
「……はい」
一旦阿部店長と目を合わせ、すぐに逸らしてわたしは水槽を見た。
「熱帯魚が好きなの?」
水槽のなかを食い入るように見つめ続けるわたしの顔を覗き込み、阿部店長が聞いた。
「昨日、和金を一匹買いました」
「和金?」
復唱し、阿部店長は口をぽかんと開ける。
「そうか、和金か……。餌はもうあげた? 昨日から飼い始めたなら、まだ絶食させてあげてね」
「え?」
「まずは環境に慣れさせないと」
今度はわたしがぽかんとする番だった。
阿部店長ははっとした顔をして、気まずそうに鼻先を指で引っ掻いた。
「俺、大学でずっと動物の行動学を研究してたんだ」
「そう、なんですか。道理で。お詳しいです」
合点がいき、感心しながらも、既に海月がフライングしてあげてしまったんじゃないかと不安になる。
「小夏さん、は」
「はい?」
「お向かいの、大きな一軒家に住んでるんだね」
「あ、はい……古い家ですけど」
「昨日一緒にいた方は……、弟さん?」
「おと、」
弟?
あまりの予想外な言葉に、わたしはごくりと唾を飲んだ。咽せそうだった。
それから、レジ応援のアナウンスが入ったので、阿部店長との会話はそこでおしまいになった。
ポイント五倍セールが始まったから、お客さんが途切れない。
それでもわたしはいつまでも、納得がいかなかった。
昨日会ったとき海月はいつものワイシャツにスラックス姿だったから、庭師ってより仕事帰りのサラリーマンには見えたとは思う。ニコニコしてるから、わたしよりも、年下に見えてた?
それでも……。
『菅野さんの彼氏さんって、優しそうな人だね』
千葉さんには、ちゃんと彼氏に見えたのに。
わたしたちが、姉弟かって?
冗談じゃないって!
水槽の、エアーポンプの音がやけに大きく聞こえる。
「小夏さんは、動物好きなの?」
「……はい」
一旦阿部店長と目を合わせ、すぐに逸らしてわたしは水槽を見た。
「熱帯魚が好きなの?」
水槽のなかを食い入るように見つめ続けるわたしの顔を覗き込み、阿部店長が聞いた。
「昨日、和金を一匹買いました」
「和金?」
復唱し、阿部店長は口をぽかんと開ける。
「そうか、和金か……。餌はもうあげた? 昨日から飼い始めたなら、まだ絶食させてあげてね」
「え?」
「まずは環境に慣れさせないと」
今度はわたしがぽかんとする番だった。
阿部店長ははっとした顔をして、気まずそうに鼻先を指で引っ掻いた。
「俺、大学でずっと動物の行動学を研究してたんだ」
「そう、なんですか。道理で。お詳しいです」
合点がいき、感心しながらも、既に海月がフライングしてあげてしまったんじゃないかと不安になる。
「小夏さん、は」
「はい?」
「お向かいの、大きな一軒家に住んでるんだね」
「あ、はい……古い家ですけど」
「昨日一緒にいた方は……、弟さん?」
「おと、」
弟?
あまりの予想外な言葉に、わたしはごくりと唾を飲んだ。咽せそうだった。
それから、レジ応援のアナウンスが入ったので、阿部店長との会話はそこでおしまいになった。
ポイント五倍セールが始まったから、お客さんが途切れない。
それでもわたしはいつまでも、納得がいかなかった。
昨日会ったとき海月はいつものワイシャツにスラックス姿だったから、庭師ってより仕事帰りのサラリーマンには見えたとは思う。ニコニコしてるから、わたしよりも、年下に見えてた?
それでも……。
『菅野さんの彼氏さんって、優しそうな人だね』
千葉さんには、ちゃんと彼氏に見えたのに。
わたしたちが、姉弟かって?
冗談じゃないって!