mimic
「弟だなんて心外だなぁ」


目が冴えるほど赤い和金を見下ろしていたわたしに、


「姉弟だとできないこと、する?」


海月はじりじりと、間合いを詰める。


「な、なにそれ」
「なにって……エロいこと。」
「は⁉︎」
「煽ってんのはそっちでしょ」


腕を伸ばした海月の胸に、吸い寄せられるように体を預けた。
後頭部を撫でる海月の手のひらが、大きくて温かくて心地よい。

大好きな、お日様の匂いがする。


『愛情を注いだ分、喪失感が大きいから。心の負担になることは、なるべく避けたほうが賢明だよ』


悲しみを減らそうと試みる行為は、別れの準備によく似ている。
別れが訪れない出会いなどない。

けど。

それでもわたしは、限られた時間を大切にしたい。

海月と、一緒に。




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