mimic
「夜のパーティーも素敵ですね!」


ひときわ甲高い女性の声が背後で聞こえ、驚いたわたしの両肩が跳ね上がる。


「ガーデンウエディングって言ったら晴れた日の昼下がりとか素敵かなぁって思ってたけど、黄昏時のこういう雰囲気もロマンチックでいいかもー!」


小さく振り向くと、女性がふたりこちらに向かって歩いて来る。わたしはそそくさと脇に寄り、道を開けた。


「もっと暗くなったら、ライトアップが華やかでもっと素敵ですよ」
「そうですよね! なんかほんと、全部がお洒落で憧れちゃうなぁ」


うっとりと目を細め、興奮で頬を紅潮させる女性は、「彼も今日、見学に来られればよかったのになぁ」隣で営業スマイルを浮かべるスーツ姿の女性に残念そうに言った。


「帰ってからご相談なさってください。ただ、なるべく早くお決めいただいた方がよろしいかと」


この式場のスタッフらしきスーツ姿の女性は、恐縮した風に眉を下げた。


「そうですよね、人気すぎて、なかなか予約取れないですもんねぇ……」


すれ違うとき軽く会釈され、わたしは焦ってお辞儀をする。
不審者と思われたかもしれない。早く立ち去らなければ、と思った直後。


「あ、あのふたりも見学かなぁ」


女性が足を止めたので、もう反対方向に歩き始めてたわたしだったけど、釣られるように無意識でそちらを見た。


「すごい、美男美女……! 絵に描いたようなお似合いのカップルですねぇ!」


わあ、っと感嘆するような声を上げ、女性が言った。
わたしは目を見張る。足を止めずに。
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