冷徹騎士団長の淑女教育
(あれが、ユーリス城なのね)
クレアは、ユーリス城を肉眼で見るのは初めてだった。絵画の中では幾度も目にしたが、実物の美しさは格別だった。幾つも連なる白亜の棟が、エメラルドグリーンの屋根の屈強な城を囲むように建てられている。ため息がもれそうなほどの神々しさだ。
辺りは木々に覆われ、街中にありながら、まるでそこだけ浮かんでいるように長閑で優雅だった。
幼い頃に見た重々しい要塞のバロック城とは、まるで装いが違う。
今からあの場所でアイヴァンと連れ立ち舞踏会に参加すると思うと、ますます気持ちが高揚する。
街を過ぎると木々に覆われた小路を抜け、いよいよ馬車は厳かな門を潜り抜けた。ユーリス城の馬車付き場には、今宵の舞踏会に訪れる人々の馬車がそこかしこに停まっていた。
色とりどりの艶やかなドレスを着た貴婦人に、巧みな装飾の施されたジュストコールを身に着けた男性貴族たち。いつもの生活とは明らかに違う煌びやかな情景に、クレアは眩暈がしそうだった。
(早く、アイヴァン様にお会いしたい……)
アイヴァンさえ傍にいてくれれば、この不安と緊張もきっと和らぐのに。クレアがそんなことを思っていると、まるで祈りが通じたかのように、馬車が停止した。
「お出迎えにいらっしゃっています」
終始無言だった従者はそう言うと、素早く馬車を降りた。
このドアの向こうに、アイヴァンがいる。待ち切れなくなったクレアは立ち上がると、ドレスの裾を持ちながらドアを開けて馬車の外に足を踏み出す。
だが――。
「ようこそユーリス城へ」
クレアを待ち受けていたのは、思いもよらぬ人物だった。
クレアは、ユーリス城を肉眼で見るのは初めてだった。絵画の中では幾度も目にしたが、実物の美しさは格別だった。幾つも連なる白亜の棟が、エメラルドグリーンの屋根の屈強な城を囲むように建てられている。ため息がもれそうなほどの神々しさだ。
辺りは木々に覆われ、街中にありながら、まるでそこだけ浮かんでいるように長閑で優雅だった。
幼い頃に見た重々しい要塞のバロック城とは、まるで装いが違う。
今からあの場所でアイヴァンと連れ立ち舞踏会に参加すると思うと、ますます気持ちが高揚する。
街を過ぎると木々に覆われた小路を抜け、いよいよ馬車は厳かな門を潜り抜けた。ユーリス城の馬車付き場には、今宵の舞踏会に訪れる人々の馬車がそこかしこに停まっていた。
色とりどりの艶やかなドレスを着た貴婦人に、巧みな装飾の施されたジュストコールを身に着けた男性貴族たち。いつもの生活とは明らかに違う煌びやかな情景に、クレアは眩暈がしそうだった。
(早く、アイヴァン様にお会いしたい……)
アイヴァンさえ傍にいてくれれば、この不安と緊張もきっと和らぐのに。クレアがそんなことを思っていると、まるで祈りが通じたかのように、馬車が停止した。
「お出迎えにいらっしゃっています」
終始無言だった従者はそう言うと、素早く馬車を降りた。
このドアの向こうに、アイヴァンがいる。待ち切れなくなったクレアは立ち上がると、ドレスの裾を持ちながらドアを開けて馬車の外に足を踏み出す。
だが――。
「ようこそユーリス城へ」
クレアを待ち受けていたのは、思いもよらぬ人物だった。