冷徹騎士団長の淑女教育
「これはこれは、エリック大公殿下。舞踏会においでとは珍しい。おや、そちらのご令嬢は?」
胸板の熱い白髪の貴族が、にこやかにエリックに声をかけてきた。エリックは手慣れたお辞儀とともに、品のある笑顔を返す。
「同伴者の、クレア嬢です」
「なんと美しいご令嬢だ。そして、社交界きっての美男子と名高いあなたにとてもお似合いです。今夜の主役はお二人で決まりですな」
ハッハッハッと豪快に笑いながら、白髪の貴族は連れの婦人とともにその場から去った。彼の姿が見えなくなるなり、エリックがそっとクレアに耳打ちする。
「今のは、噂好きのランドン伯爵だ。僕らのことは、あっという間に広まるだろうね。これで、君は好き勝手には帰れなくなったわけだ。僕を置いて帰れば、なんてマナーの悪い令嬢だと社交界で悪評が立つよ。君の悪評は、クロフォード騎士団長にも影響するだろうね」
クレアは、こちらをしたたかに見ているダークブルーの瞳を唖然と見つめた。
エリックの言っていることは、もっともだった。王族の次に権力を持つフィッシャー大公家の子息をないがしろにしたら、貴族たちから蔑みの目で見られることは間違いないだろう。
胸板の熱い白髪の貴族が、にこやかにエリックに声をかけてきた。エリックは手慣れたお辞儀とともに、品のある笑顔を返す。
「同伴者の、クレア嬢です」
「なんと美しいご令嬢だ。そして、社交界きっての美男子と名高いあなたにとてもお似合いです。今夜の主役はお二人で決まりですな」
ハッハッハッと豪快に笑いながら、白髪の貴族は連れの婦人とともにその場から去った。彼の姿が見えなくなるなり、エリックがそっとクレアに耳打ちする。
「今のは、噂好きのランドン伯爵だ。僕らのことは、あっという間に広まるだろうね。これで、君は好き勝手には帰れなくなったわけだ。僕を置いて帰れば、なんてマナーの悪い令嬢だと社交界で悪評が立つよ。君の悪評は、クロフォード騎士団長にも影響するだろうね」
クレアは、こちらをしたたかに見ているダークブルーの瞳を唖然と見つめた。
エリックの言っていることは、もっともだった。王族の次に権力を持つフィッシャー大公家の子息をないがしろにしたら、貴族たちから蔑みの目で見られることは間違いないだろう。