冷徹騎士団長の淑女教育
「……どうしても目が行ってしまうから、困るんだ」

「胸が見たいの?」

クレアがキョトンと言えば、エリックは驚いたように立ち止まるとしげしげとクレアを見つめた。そして、困ったように笑う。

「やれやれ。クロフォード騎士団長は、君を過保護に育てすぎたようだね。ひとつだけ教えてあげよう。男は皆、女の体が大好きなんだ。好きじゃない風を装っているやつほど、大好きなものなんだ」

赤らんだ顔で、皮肉めいた微笑を浮かべながら言うエリック。

「特に君は、華奢なわりに……。ゴホゴホッ、いや、もうこの話はもうよそう」

急にむせこんだ後で、エリックは半ば無理矢理に話を中断した。





(アイヴァン様も、女性の体がお好きなのかしら……)

クレアは、厳しいアイヴァンの顔をぼんやりと思い浮かべる。

アイヴァンにとって、クレアは子供同然。クレアの体になど、彼はおそらく見向きもしないだろう。エリックの言い分は、アイヴァンとクレアにだけは当てはまらない。

だが、アイヴァンは大人の女性の体になら興味を持つのではないだろうか。

以前に見かけた、赤いドレスの女のような……。

心の中で自然とそう結論づいて、クレアは重苦しい気分になったのだった。



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