冷徹騎士団長の淑女教育
白亜の階段を登り終えれば、見たこともないほど豪華なエントランスが広がっていた。

金の装飾の施された白壁に、格子模様の大理石の床。すぐに侍従が二人のもとへと近づき、舞踏会の開かれるホールへと案内を始めた。

彫刻が見事な柱が等間隔に並ぶ廊下には、歴代の王の肖像画が並んでいた。

一番最後となる肖像画の前で、エリックは足を止めクレアに見るよう促した。

「これが、現国王の肖像画だよ」




絢爛豪華な家具やテーブルを背景に、椅子に腰かける美男が描かれていた。

即位して間もなくの頃だろうか。齢三十前といった雰囲気の男が、ブラウンの瞳をこちらにじっと向けている。

肩まで伸びた緩やかな褐色の髪に、穏やかな眼差し。とても優しそうな人だと思った。そして、何だか哀しげに見える。

「あいにく、陛下は容態を崩しているらしくてね。本来ならばお会いできるところなんだけど、今日は無理だろうな。でも、おそらく王妃にはお会いできるよ」

エリックはそう言うと、クレアの緊張をほぐそうとするかのように笑って見せた。
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