冷徹騎士団長の淑女教育
中年女性の声を合図に、建物の中から大勢の子供たちが走り出てくる。途端にアイヴァンとクレアの周りは、歓喜に満ちた子供の笑顔で埋め尽くされた。

「わーい、アイヴァンさんだ!」
「今日は何を持ってきてくれたの?」
「早く早く、中に入ってよ!」

アイヴァンの長い手足に、我先にとじゃれつく子供たち。アイヴァンは笑顔こそ見せはしないものの、子供たちを邪険に扱うことはなく優しく受け止める。

「そんなに一気に来てはアイヴァンさんが困ってしまうわ! まずは中でゆっくりしてもらいましょう。さあ、お出迎えの支度をして!」

「はーい!」

無邪気に返事をすると、子供たちはきゃっきゃと声を上げながら建物の中に戻っていく。

子供たちも女性もいなくなったあとで、呆気にとられたクレアがポカンとアイヴァンを見ていると、「何だ?」とアイヴァンは不機嫌そうに眉を寄せた。




「子供の扱い方は、これでも以前よりはマシになった方だ」

「……アイヴァン様は、よくここに来られるのですか?」

「まあな」

「どうしてご身分をお隠しに?」

「俺の母親は、俺を産んだことでこの村から追放された身だ。当然のことだろう」

他にも聞きたいことはあったが、普段から極端に口数の少ない彼のことだ。それ以上深くは教えるつもりはないらしく、アイヴァンは「一緒に来い」とクレアに告げると建物の中に入って行った。
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