冷徹騎士団長の淑女教育
建物の中は、粗末ではあるが隅々まで綺麗に掃除されていて、家具などもきちんと整っていた。長い木製のテーブルと椅子の並んだ食堂で、アイヴァンが馬の鞍から降ろした麻袋を開くなり、子供たちが歓声を上げながらわっと群がってきた。

中には、見るも鮮やかな色とりどりの飴玉が入っている。

「アイヴァンさんは、ときどきこうしてここを訪れて、子供たちにお菓子などを与えてくれるのです」

エリスと名乗ったシスターが、子供たちと戯れるアイヴァンを遠目に見ながらクレアに耳打ちした。

「あなたは、アイヴァンさんの妹さん?」

端から見たらやはり自分たちの関係は、そのように見えるらしい。クレアは傷つきつつも、「ええ、そのようなものです」と言葉を濁した。




「この子供たちは、皆この村の出身なのですか?」

王都アルメリアにほど近いとはいえ、この村は人口が多いようには思えない。現に村の入り口からこの孤児院に至るまで、クレアは数人の村人にしか出会わなかったし、子供の気配すら感じなかった。

それに反して、ここにはざっと見ただけでも三十人は子供がいる。赤ん坊から十二歳程度の子供が、閑散とした村には似つかわしくないはしゃぎ声を上げていた。働いているシスターも、エリスの他に幾人もいるようだ。

いいえ、とエリスはかぶりを振った。

「皆、他国から来た戦災孤児ばかりです。十年前のバロック王国での戦いを機にアイヴァンさんはこの孤児院を設立なさり、多くの孤児を招き入れました。行商人のアイヴァンさんはその後も様々な国から戦災孤児をここに集め、多額の資金を提供し、面倒を見られているのです」

どうやらアイヴァンは、ここでは裕福な商人としてまかり通っているらしい。
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