冷徹騎士団長の淑女教育
「おやおや。何も知らない無垢な令嬢かと思いきや、そのような瞳もできるのですね」

ククク、と馬鹿にしたようにダグラスが笑う。

「さすが、あの厳格なクロフォード騎士団長に仕込まれただけはある」

クレアは、凛とした姿勢を崩さなかった。この状況で、自分を守れるのは自分だけだ。怯んだり慄いたりしたら、相手の思うつぼだ。

「これから、私をどこに連れて行くのですか? あなたのお屋敷ではないのでしょう?」

「ご名答。とある場所で、とある方に会っていただきます。もう少し時間がかかりますので、しばらくの間お待ちを」

クレアを嘲るような態度を崩さないまま、ダグラスは言った。





小一時間も走り続けると、馬車は停止した。

「叫ばれると困りますので」

ダグラスはクレアの口を布で覆うと、声が出せないように封じた。目の前には、見たことのない古びた邸がそびえている。

冷たい石壁で造られた円筒状の建造物は、かつてのバロック城を彷彿とさせた。おどろおどろしい外観は、屋敷と言うよりは小ぶりな要塞城のようだ。

おそらく、もう何年も使われていないものだろう。石壁には蔦が這い、鉄製の扉はさび付いている。建物の形状から察するに、ユーリス王国が建国される以前に建てられたものだろう。

庭にも草が生い茂り、湿った風に煽られ木々が不気味に凪いでいる。空にはいつしか灰色の雲が立ち込め、世界を暗くしていた。

クレアは、ダグラスと御者に逃げないように羽交い絞めにされながら、洋館の奥の部屋に連行された。



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