冷徹騎士団長の淑女教育

ユーリス王国の王宮騎士団の訓練所は、城の敷地内の外れにある。

高い石の塀でぐるりと囲まれたそこは、優雅な白亜のユーリス城の雰囲気から一転して、今日も男臭い熱気に包まれていた。

「団長……っ! どうか、もうご勘弁を!」

アイヴァンと剣の立ち合いをしていた若い騎士が、泣き声に似た声を出しながら地面にへたり込む。繰り返し追い詰められているのに、それでもアイヴァンが執拗に攻めるので、精魂疲れ果てたようだ。

アイヴァンは我に返り、肩で息をしながら怯える騎士を見た。

立ち合いの前はそこそこの男前だったはずが、今は見る影もない。汗で髪と衣服をびっしょりと濡らし、怯えた顔で唇を震わせる様は、まるで溺れたあとの犬のようだ。

彼は、先日入隊したばかりの騎士だった。男爵家の次男で、巷では評判の剣士だったという。だが、これまで数えきれないほどの剣士と手合わせをしてきたアイヴァンにしてみれば、取るに足らない相手だった。手加減をするつもりが、考え事をするあまり本気で打ち込んでいたようだ。



「……筋はいいから、今後も訓練に励め」

淡白に言い捨てるアイヴァンに、騎士は「はい……っ!」と震え声で返事をした。

息をつきながら額に張り付いた前髪を払い、その場をあとにするアイヴァン。立ち合いを見物していた騎士たちが、逃げるように一斉に道を空ける。

鬼気迫るアイヴァンの様子に、怯んでいるのだろう。
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