冷徹騎士団長の淑女教育
「まさか。お前以外には頼んでいない」
おそらく、先日の舞踏会のときにクレアの居場所が漏れたのだろう。それを恐れてクレアの住みかを変える決意をしたのに、あろうことか一番恐れていた事態が先に起こってしまった。
「なぜ、ダグラスが……」
アイヴァンは、腰に刺した剣の柄をぎゅっと握り締める。怒りが足元から吹き上がるように湧いてきた。クレアの身を案ずるあまり、狂いそうになる。
困惑するベンと騎士たちを置き去りに、アイヴァンは駆け出した。あの華奢な体でクレアが不安に打ち震えていると思うと、鞭うたれたように胸が痛んだ。
「アイヴァン様……!」
背後からベンの声が聞こえたが、もはやクレアのことしか考えられないアイヴァンの耳には入らない。
(ダグラスはなぜクレアを奪った? 彼は何者だ?)
ダグラスは人格者で、城で働く者の中でも人気が高い。
誰とでも愛想よく接し信頼を得ている、いわばアイヴァンとは逆の立場の人間だ。
とくに王妃には気に入られており、ことあるごとに彼女に呼びつけられている様子をたびたび目にした。
城の敷地内を走り抜けながら、アイヴァンは考えを巡らせる。
ダグラスが有力貴族の推薦でこのユーリス城の執務となったのは、たしか十年前のことだった。それからダグラスは持ち前の人間力で出世を極め、三年前に執務官長にのぼりつめたように記憶している。
アイヴァンの背筋を、良からぬ予感がしきりに駆け抜けていく。吹き出す汗が冷たくなるのを感じながら、アイヴァンはダグラスの邸の場所を聞き出すために、猛々しい黒豹のごとく城に駆け込んだ。
おそらく、先日の舞踏会のときにクレアの居場所が漏れたのだろう。それを恐れてクレアの住みかを変える決意をしたのに、あろうことか一番恐れていた事態が先に起こってしまった。
「なぜ、ダグラスが……」
アイヴァンは、腰に刺した剣の柄をぎゅっと握り締める。怒りが足元から吹き上がるように湧いてきた。クレアの身を案ずるあまり、狂いそうになる。
困惑するベンと騎士たちを置き去りに、アイヴァンは駆け出した。あの華奢な体でクレアが不安に打ち震えていると思うと、鞭うたれたように胸が痛んだ。
「アイヴァン様……!」
背後からベンの声が聞こえたが、もはやクレアのことしか考えられないアイヴァンの耳には入らない。
(ダグラスはなぜクレアを奪った? 彼は何者だ?)
ダグラスは人格者で、城で働く者の中でも人気が高い。
誰とでも愛想よく接し信頼を得ている、いわばアイヴァンとは逆の立場の人間だ。
とくに王妃には気に入られており、ことあるごとに彼女に呼びつけられている様子をたびたび目にした。
城の敷地内を走り抜けながら、アイヴァンは考えを巡らせる。
ダグラスが有力貴族の推薦でこのユーリス城の執務となったのは、たしか十年前のことだった。それからダグラスは持ち前の人間力で出世を極め、三年前に執務官長にのぼりつめたように記憶している。
アイヴァンの背筋を、良からぬ予感がしきりに駆け抜けていく。吹き出す汗が冷たくなるのを感じながら、アイヴァンはダグラスの邸の場所を聞き出すために、猛々しい黒豹のごとく城に駆け込んだ。