冷徹騎士団長の淑女教育
ダグラスの邸は、城の目と鼻の先にあった。広大な敷地内には、三階建てと思しき煉瓦造りの重厚な建物がそびえ、広々とした温室や噴水まで備え付けられていた。

執務官長という役職にしては、豪華な邸に住んでいる。

挨拶もなく殴り込みのように邸に乱入してきた騎士に、玄関ホールにいた召使いたちは怯えたような目を向けた。



「ダグラスはどこだっ!」

「お、お城に出仕なされております……」

不運にもアイヴァンの一番近くにいた若い侍女が、震え声で応えた。ますます鬼気迫るアイヴァンの表情に、召使いたちがざわついている。

「……嘘をつけ。邸に一度戻ってきただろう?」

「戻られてはおりません……」

アイヴァンは舌打ちをすると、無遠慮に邸の内部に足を踏み入れた。

(クレアはどこだ……?)

クレアの身が気がかりで、息遣いすらおぼつかない。

そこで、アイヴァンはあるものに気づき足を止めた。

ダグラス邸の玄関ホールには、一面に臙脂色の絨毯が敷き詰められており、玄関扉と向かい合うようにして金造りのキャビネットが置かれている。

そこには、壺や置物などの高価そうな装飾品が並べられていた。その上部には、ダグラス自らの肖像画がかけられている。

その一番うしろ、珊瑚の置物に隠されるようにして、紫色のタペストリーが額に入れられ飾られていた。

アイヴァンは吸い寄せられるようにそちらへと歩むと、タペストリーの入った額を手に取った。
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