冷徹騎士団長の淑女教育
アイヴァンとエリックを乗せた二頭の馬が、アルメリアの街道を全速力で駆け抜けていく。

やがてクレアのいたクロフォード家の別宅を行き過ぎると、エリックはサンベルトリ教会のある広場の先で馬を停めた。そして、南東の方角を指差す。

「あの方向に向かっていた。僕にはそのとき馬がなかったし、君を呼んだ方がいいと思って追いはしなかった」

アルメリアの郊外は、南側がとくに閑散としている。南西にはまだアイヴァンの母の出身である村や牧場があるが、南東は乾燥地帯で農作物すら育てるのが難しいことから、極端に人口が少ない。

道や土地の開拓も進んでいない地域も多く、アルメリアの住人もよほどのことがない限り足を踏み入れようとはしない。

エリックにしても、クレアの身を案じているのだろう。焦ったように顔を強張らせているその様子に、アイヴァンは彼が自分の敵ではないことを感じ取る。本当の敵に気づいた今、フィッシャー家へ長年の疑いがみるみる晴れていった。

だが今はそれどころではない。クレアを救出するのが先だ。

アイヴァンはエリックの差した方向を睨みつけると、鞭をしならせ馬を進めた。
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