冷徹騎士団長の淑女教育
アイヴァンは、懸命に辺りを捜索した。クレアは、きっとどこかの建物に閉じ込められているはずだ。

家屋を、しらみつぶしに訪ねていく。人口の少ない地域なので、建物自体が少ないのは幸いだった。

「これじゃあ、埒が明かないな……」

アイヴァンに付き従っているエリックが、嘆くように言った。クレアの居場所の手掛かりは、皆無に等しい。

だが、アイヴァンは諦めるつもりなど毛頭なかった。

クレアの身を守ることが、彼の使命だからではない。

純粋に男として彼女を想う気持ちが、どうしようもないほどに彼を激しく突き動かしていた。




『私は、女としてあなたをお慕いしているのです……』

舞踏会からの帰りの馬車で、艶めいた眼差しを向けてきたクレアを思い出す。

もしもあの時、彼女を受け入れていたら、自分は今ほど焦りはしなかっただろうか。

彼女の華奢で柔らかな体を抱きしめ『俺も愛している』と耳元で囁いていたならば、これほど枯渇した気持ちにはならなかっただろうか。

人生で一度も感じたことのない後悔の念が、厳格な騎士団長の心を乱す。
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