冷徹騎士団長の淑女教育
「存外賢い娘ね。教えてあげましょうか?」

赤い唇に半円を描いて、デボラが不気味な笑みを浮かべた。

「私の生まれたエインスタッド家は、遠く先祖を遡ればモンタギュー家と呼ばれていたの。かつてリーチェと呼ばれてたあなたの雇い主、ダグラスもそうよ。もとを辿ればモンタギューの血筋に行き着く」

「モンタギュー家……」

クレアは、その一族の名前に聞き覚えがあった。たしか、ユーリス国が建国される前にこのあたりを統治していた一族の名前だ。

モンタギュー家は勇敢な兄弟に征伐され、弟がユーリス国を統治した。そして、現国王ハワードの代までウインストン家の統治は続いている。

(まさか……)

「私とダグラスは、ユーリスに怨みを持つものとして、完全に利害が一致した。そう、私はモンタギュー家の怨恨を晴らすためにこの国に嫁いできたの。毒で弱らせた国王亡きあとは、私が女王となってこの国を取り戻すつもりだった」




口調から察するに、デボラは現国王にも毒を盛り続けているようだ。

クレアは、この頃国王の体調が優れないと耳にしたのを思い出し、背筋を凍らせた。

(なんて恐ろしく、あさましい女なの……)

怒りが、燃え盛る炎の如くつま先からせり上がってくる。
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