冷徹騎士団長の淑女教育
その時だった。

部屋の向こうが騒々しくなり、室内にいた者たちは何事かと次々と戸口に目を向けた。

室外では、男たちが呻く声や床に倒れる音が、生々しく響いている。

「くそっ、見つかったか……?」

短剣を握り締めたままのダグラスが、低く唸った。

その直後、ドンッと物音がして、扉が激しく開いた。

ダグラスが完全にそちらに気を取られている隙に、クレアは彼の手首めがけて渾身の手刀を落とす。

「うぐっ!」

ダグラスの手を離れた短刀が、カランと床に転がった。



扉を蹴破ったのは、アイヴァンだった。

ここに至るまで、よほどの数の相手と闘ったのか、息は乱れ頬には刀傷までできている。

剣を片手にクレアを見つめていたアイヴァンは、薄く微笑むと「上出来だ」とクレアがダグラスに仕掛けた技をまるでレッスン中かのように褒めた。

「アイヴァン様……」

この世で最も信頼していて、最も頼りにしているアイヴァンの登場に、研ぎ澄まされていたクレアの心が乱される。

アイヴァンがなぜ自分を救い、淑女として厳しく育てたかを知った今、今まで以上に強くならなければならないのは分かっている。

だが、どうしても心の脆さが姿を現し、泣きそうになったのだった。
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