冷徹騎士団長の淑女教育
どうやって追い返したらいいのだろうとクレアが戸惑っていると、

「ところで君は、どうしてため息なんかついていたの?」

エリックが、クレアのことを案ずるように聞いてきた。

素性の知れない彼に話して良いものか迷うクレアだったが、次第にエリックの笑顔にほだされていく。

それにクレアも、誰かに苦しい胸のうちを聞いてもらいたかった。




「その……、うまくいかなくて、悩んでるんです……」

しどろもどろに口を開けば、エリックが笑う。

「急に、そんなにかしこまらなくていいのに。さっきまで、砕けた口調だったじゃないか。そんなに僕のこと警戒してる?」

塀を乗り越え侵入してきた時点で充分に怪しいが、淑女たるものそこは口にしてはいけないと思った。

「警戒しているわけではないんですけど……」

「僕は、さっきまでのような口調で話して欲しいな。その方が、仲良くなれそうだし。年も近いしそうしてよ」

そう言って、エリックはダークブルーの瞳を細める。

「僕は、君と友達になりたいだけなんだ」



友達という言葉に、クレアは弱い。

なぜなら、ずっと友達が欲しいと憧れてきたからだ。この邸に住んでから随分たくさんの本を読み、友情というものがいかに尊いものかを学んだ。

クレアは家族がいない。恋人もいない。アイヴァンの忠告に背くことになったとしても、友達を作るくらい許されるのではないかという気がしてくる。
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