冷徹騎士団長の淑女教育
それからエリックは、定期的に塀を乗り越えクレアのもとに来るようになった。

毎回クレアが庭を散歩していて、庭師の男が外出している絶妙なタイミングを狙って現れる。

エリックがこうしてクレアに会いに来ていることは、いつも室内で用事に専念しているレイチェルはもちろん、アイヴァンも気づいていなかった。

人目につかない茂みで、二人は色々な話をした。エリックは自分の愛馬の話や、外国の話をたくさんしてくれた。外の世界をほとんど知らないクレアにはエリックの話はどれも新鮮で、飽きることがなかった。




エリックと密会するようになって二週間近くが経った初夏のことだった。

「クレア。何がおかしい?」

いつものようにアイヴァンに勉強を教えてもらっていたクレアは、エリックがしてくれた面白おかしい話を思い出し、知らず知らずのうちに教科書を前に微笑を浮かべていた。

アイヴァンに鋭く指摘され、はっと姿勢を正す。

「何でもございません……!」

取り繕ってみたものの、アイヴァンはクレアをじっと見つめたまま勉強に戻ろうとしない。

そんなに真っすぐ見つめられたら、ドキドキしちゃうじゃない。クレアがそんなことを思っていると、

「最近、どことなく楽しそうだな」

いつになく棘のある口調で、アイヴァンが言った。



「そうですか?」

「ああ。前より生き生きしている」

「気のせいだと思いますけど……」

すると、ひと呼吸おいてから、アイヴァンが改まった口調で聞いてきた。

「――日曜日、誰かに会っているのか?」

< 71 / 214 >

この作品をシェア

pagetop