約束~悲しみの先にある景色~
1度瞬きをすると、それだけで見ていた景色が変わった。


ここは車の中で、段々と焦点の合う私の目の先にはトユンさんの顔がある。


これから引っ越しに行く予定で、その引っ越し先にはもちろんお父さんはいなくて、今はお父さんは刑務所の中。


今まで私が見ていたお父さんは、全部私の頭の中で作り出したもので、フラッシュバックが起こっただけ。


(私……っ、)


きちんと全てを理解した私は、安心感からかまた目に涙を溜めながらトユンさんの手を握り返した。


「っ、良かった」


その瞬間、彼はくしゃりと笑顔を浮かべて私の手を握る力を強めた。


「瀬奈ちゃん、ずっとパニック起こしてたんだ
。…もしかして、何か嫌な事とか思い出してた?」


真剣なその瞳の中に映るのは、安心した様な、けれど彼の質問のせいで怯え震えている私の姿。


「…あ、……」


『お父さんに虐待を受けていた頃の事を思い出していました』


そう言えば良いだけなのに、それを言うとまたフラッシュバックが起こりそうで、でも言わなかったらトユンさんに変に思われそうで。


いや、もう既に私が変なのは彼も分かっていると思うけれど。
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