約束~悲しみの先にある景色~
「“パパの手料理”にはちゃんと他の店員残ってるし、皆ちゃんと仕事してるから銀河と違ってえ!」


「うるせぇなぶっ殺すぞてめぇ」


(銀河…珍しい名前だな、)


名前の響きがいいな、と思いながら、


(何か雰囲気やばくない…?)


と、私が少し心配になって、思わず横に立つ店員さんを見上げると。


「ごめんね2人共ちょっとうるさいから喧嘩するなら表か家の中でやってね?ね?」


その店員さんは、今がチャンスと言わんばかりににっこりと口元に笑みをたたえながらそう提案した。


最後の、『ね?』


という所では、恐ろしい程の眼力で2人を見つめながら。


「…ごめんなさい静かにタピオカについて調べます」


「……、」


するとすぐに2人は口喧嘩を止め、先程のうるささが嘘の様に静かにパソコンと向き合い始めた。


後に聞こえるのは、恐ろしいスピードでキーボードを打つ音と、マウスのクリック音のみ。



口喧嘩から解決までが一瞬過ぎて、私は素直に隣に居る店員さんは凄いと感動した。


当の店員さんは、


「うちの家族がうるさくて、本当にすみません…」


と、眉を下げて謝りながら、


「家族に渡すマカロンですと、こちらはどうでしょうか?」


10個入りと書かれた箱詰めのマカロンを指差して提案して来た。


(おー!)
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