約束~悲しみの先にある景色~
「あ、トユンさん!…本当は、明日渡そうと思っていたんですけど…」


階段の方へ向かって行った彼を慌てて引き止め、たった今買ってきたばかりのマカロンの箱を袋から取り出した。


「…えっ?何何、どうしたのこれ?」


トユンさんは、マカロンの箱に引き寄せられる様にしてこちらに戻って来て、きょとんとした顔でその箱を受け取り、尋ねてきた。


私は、今有名なpromiseの1人にマカロンを手渡したのだ。


例え彼が義兄だとはいえ、それでも嬉し過ぎる。


私は、歴史に残っていいレベルの行為を成し遂げたのだ。



「あの、明日、バレンタインデー……」


ちゃんと心の準備をしていなくて、緊張で最後まで声が出ない。


トユンさんは状況が掴めていないのか、数回瞬きを繰り返して。


「…あー!明日!バレンタインデー!」


大声をあげ、私に近付いてきて軽くハグをした。


(ちょっ………!)


至近距離の彼の香水の匂いが鼻に届く。


私の顔がどんどん赤くなるのが分かる。


「え、だからくれたの!?俺に!?バレンタインデー!?マカロン!?マカロンを!?」


私よりも興奮しているトユンさんは、私の耳元で叫んで、少しハグをする力を強めた。
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