約束~悲しみの先にある景色~
「マカロンには、“特別な人”って意味があって…私にとって、トユンさんは特別な人なので…、」


一応小声で説明すると、


「……ちょっと待って、嬉し過ぎるんだけど」


急に元の声の大きさに戻した彼は、ハグをしていた腕の力を緩めて私の顔を覗き込んだ。


「…俺、こんな可愛くて素敵で優しい妹を持てて、凄く幸せ」


私にとってかなり破壊的な台詞を口にした彼は、バレンタインデーに家族から何かを貰った事無かったよ、と言いながら、私の頭を撫でた。


「これさ、今日仕事場に持って行っていい?後、メンバーに少しだけあげてもいい?…あの、ちょっと訳ありでこういう青春を味わった事がないメンバーが居るからさ、」


少しだけ眉を下げて尋ねてくる彼に、私は嬉し過ぎて泣きそうになりながら、


「もちろんです!」


と、笑顔で答えた。




(やばい凄い嬉しい!本当に嬉しい!誰かにこんな風に褒められた事無かった!)


数十分後。


トユンさんに頼まれてマカロンを持ちながら何枚も自撮りをして、持っていた抹茶味のマカロンをその場で食べ、心も胃の中も満腹になり、私とトユンさんはそれぞれの部屋に戻った。


隣の部屋からは、トユンさんの、


「…ええぇっ待って10個入り!?どうしよ、こんなに沢山…!瀬奈ちゃんありがとう!」


という声がかなりはっきりと聞こえる。
< 272 / 329 >

この作品をシェア

pagetop